地質学雑誌
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論説
ラニーニャ時のレディオラリアフラックス: 1999年太平洋赤道域西部・中部における時系列変動と海洋環境
高橋 孝三山下 仁司
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2004 年 110 巻 8 号 p. 463-479

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抄録

太平洋赤道域西部・中部には, 年間を通して高水温の西太平洋暖水塊 (WPWP) が, その東部には赤道湧昇域 (EUR) が存在し, エルニーニョ時にはWPWPが東に移動することにより大気系に異常をきたす. これまでのEl Niño-Southern Oscillation (ENSO) の解明を通じて, WPWPが地球の気候システムの熱源・水蒸気源となっていることが分かっており, 本海域は地球規模の気候変動を解明する上で重要な海域である. 本研究では, 珪質動物性プランクトンのレディオラリア群集沈降粒子フラックスを用いて海洋環境変動の考察を行った. その結果, 種組成変化をSite間で比較すると, WPWP海域に比べ, Lithomelissa setosa, Pseudocubus obeliscus, Lophophaena cylindrica等の種がEUR海域でフラックス, 割合ともに増加する違いが現れた. レディオラリアを用いた古環境復元には, 生産から堆積物中埋没までの一連の鉛直輸送と保存過程の包括的な理解が必要で, 沈降粒子フラックスに加えプランクトンネット, マルチプルコア試料を併用し, 種組成変化の観点から一連のプロセスを考察した.

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© 2004 日本地質学会
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